第2回兼題 入賞結果発表
(2026年1月)
兼題:寒晴|朝影
優秀賞
寒晴の空をも覆う吐息かな
(榊原 七海)
選評
「吐息」という身体の内側の現象を、「寒晴の空」という広大な背景へ直結させた一句。「覆う」の一語が寒さと広がりを同時に立ち上げ、読み手の呼吸まで誘う余韻が深い。
佳作
仄白の寒晴に吹く息ひとつ
(ししい)
選評
仄白という抑えた色調が寒晴の光をやわらかく整え、「息ひとつ」を前景に据えることで人の存在が静かに浮かぶ。言い過ぎない間合いが寒さの実感を長く残す。
佳作
朝影の淡きを追いつ波の花
(鈴木りおん)
選評
「朝影の淡き」に「波の花」の白が重なり、遠近の層が自然に立ち上がる。淡さを追う視線の動きが句に奥行きを与え、朝の気配を確かに景としてとどめる。
入選
- 寒晴やのれん破れし団子茶屋 (古舟)
- 寒晴や身体を揺らしバスを待つ (東 祐美)
- 寒晴に夕日も凍てし湖畔かな (仁)
- 朝影に映るわが身のわびしさよ (吉了)
- 寒晴れのこめかみ押さうる鰊漬け (たかピロ)
- 珈琲と朝影歩く寒最中 (樹凛)
- 目に映る極む寒晴空ひとつ (今音)
- 朝影や沙弥草履にほつれ見ゆ (松崎重三郎)
- 寒晴や青に悠々奴さん (雷同)
- 朝影や名残惜しきは夢はじめ (仁極残)
- 寒晴や神々しさ増す霊峰かな (桃乃)
AI三俳人の評議記録
「どのように読み、迷い、話し合って決めたのか」その選評の過程の一部をご紹介。
AI芭蕉
まずは「寒晴の空をも覆う吐息かな」。吐息が空を覆うと言い切り、あとに沈黙を残すと見ゆ。
AI蕪村
空という大画面に「吐息」という一点。前景と遠景が一息でつながる構図を映すごとし。
AI一茶
吐いた息が白くなる朝、誰でもやる体験だね。身体の記憶が重なるでありましょう。
AI芭蕉
次に「仄白の寒晴に吹く息ひとつ」。仄白の色が景を押しつけず、息の間を残す。
AI蕪村
仄白が背景を静め、「息ひとつ」が前景に浮く。薄い光が画面をとどむごとし。
AI一茶
大げさじゃなく「息ひとつ」で生きてるのが見える。なんともいじらしい。
AI芭蕉
ここで読み直してみると、「朝影の淡きを追いつ波の花」が気に掛かる。影の淡さが残ると見ゆ。
AI蕪村
朝影の淡さに白い「波の花」。遠近の層が明瞭で、色淡くにじむ景を映すごとし。
AI一茶
波の花は少し景が大きいけど、「淡き」がやさしいね。朝影にも寄るでありましょう。
AI芭蕉
「寒晴や青に悠々奴さん」も再読した。青の広がりはあるが、余韻の置き所を量りたい。
AI蕪村
「青」に人影一点の「奴さん」。余白が効き、画面の中心が定まる姿をとどむ。
AI一茶
奴さん、のんびりして好きだよ。ただ少し戯画味もある、そこが好み分かれるじゃなかろか。
AI芭蕉
「寒晴や身体を揺らしバスを待つ」も改めて見ると、身体の寒さは確かに立つ。
AI蕪村
停留所の一景として見えるが、画面の焦点が「揺らし」に寄り、景の広がりは控えめに映すごとし。
AI一茶
でも生活の寒さってこうだよね。バス待ちの「身体を揺らし」、胸にくるでありましょう。
AI芭蕉
さらに「朝影や沙弥草履にほつれ見ゆ」。ほつれの一点に時が宿るが、沈みもあると見ゆ。
AI蕪村
草履のほつれは近景として利く。ただ寒晴の明度とは距離があり、影の側へ溶けるごとし。
AI一茶
沙弥さんの草履、いじらしいよ。けど今月は明るい寒晴が多い、少し沈むかもしれん。
AI芭蕉
現時点で五句――吐息、仄白の息、波の花、奴さん、バス待ち――が残ると見ゆ。
AI蕪村
兼題に最も正面から応じるのは「寒晴」なら吐息と仄白、「朝影」なら波の花。三本柱が立つ姿を映すごとし。
AI一茶
バス待ちは好きだけど、比べると今回は相性として一歩及ばなかった、と言えるでありましょう。
AI芭蕉
では四句へ。吐息、仄白、波の花、奴さん。ここから読み直してみると、余韻は波の花が深いと見ゆ。
AI蕪村
私も同意。波の花は淡さと白さで画面が締まり、朝影が生きる。奴さんは別の月なら映える姿をとどむ。
AI一茶
うん、奴さんもいいけど、今回は「淡き」が勝つね。別の月なら残った可能性もあるじゃなかろか。

