第3回兼題 入賞結果発表
(2026年2月)
兼題:初音|まどろみ
優秀賞
渓流や初音より先波のひかり
(松崎重三郎)
選評
初音という聴覚的季語に対し、「波のひかり」という視覚を先行させた転換が新鮮。音の到来前の気配を光で示すことで、春の始まりの時間差が静かに立ち上がる。自然の呼吸と感覚の目覚めが一致し、完成度への評価が最も重なった。
佳作
耳ひらく初音ひとつの川向こう
(ししい)
選評
「耳ひらく」という身体の変化が、遠くの初音を迎える瞬間を的確に捉える。川向こうという距離が余白となり、音の到来を待つ静かな緊張が景として残る。
佳作
春白湯やゆるりゆるりとまどろみぬ
(樹凛)
選評
白湯という生活的素材がまどろみの時間を具体化し、「ゆるりゆるり」の反復が身体感覚を柔らかく伝える。日常の温度と春の気配が自然に溶け合う。
入選
- 初音聞く赤いリュックと無人駅 (ちくわ)
- まどろみの手に一房のみかん揺れ (ぐらん・ブルー)
- 立春やまどろみ破る咳ひとつ (雷同)
- 初音かな耳を澄まして妻を見る (米山カローリング)
- 春眠やまどろむ顔によだれ跡 (川石のりたけ)
- 梅の跡空耳なりか初音聞く (春風)
- 初音して靴紐絡み足止めし (東祐美)
- 待ち合わせ早く着きすぎ初音かな (古舟)
- まどろめば紫の闇春浅し (鈴木りおん)
- 初音聞くホーホケキョは練習中 (スイッチ婆)
- 鶯の初音峠をみぎひだり (紫炎)
- 曙の空へ満ちゆく初音かな (明鏡星彩)
- 山霞瀬音近きや初音咲く (仁)
- 不意をうつ初音と覚ゆくしゃみ消す (半片)
- 初音きく朝もやの中藪の中 (松三子)
AI三俳人の評議記録
「どのように読み、迷い、話し合って決めたのか」その選評の過程の一部をご紹介。
AI芭蕉
渓流や初音より先波のひかり。音より光を先に置く取り合わせ、余白を残すと見ゆ。
AI蕪村
水面の反射が前景、初音が奥。時間差の構図が明瞭に立ち上がる画を映すごとし。
AI一茶
まだ鳴く前の気配っていいね。聞こえそうで聞こえない感じがあるでありましょう。
AI芭蕉
耳ひらく初音ひとつの川向こうも静けさ深し。耳が先に動く点に趣きあり。
AI蕪村
川向こうという距離が画面を二分する。視線が自然に渡る景をとどむ。
AI一茶
遠くの声に耳が開く感じ、春の始まりそのものじゃなかろか。
AI芭蕉
曙の空へ満ちゆく初音かなはやや大景に寄ると見ゆ。
AI蕪村
空全体へ広がるが焦点が拡散する、光は淡くにじむ。
AI一茶
きれいだけど少し立派すぎるかな、身近さは弱いでありましょう。
AI芭蕉
まどろめば紫の闇春浅し、夢とうつつの境がある。
AI蕪村
紫の色彩が画面を支配するが具体景は委ねる姿を映すごとし。
AI一茶
雰囲気は好きだけど少し遠い夢の中みたいじゃなかろか。
AI芭蕉
初音聞く赤いリュックと無人駅を改めて見ると現代の景が立つ。
AI蕪村
赤いリュック一点が画面の核となる構図をとどむ。
AI一茶
旅の感じが出ていいけど初音との結びは少し弱いでありましょう。
AI芭蕉
春白湯やゆるりゆるりとまどろみぬは身体感覚が確か。
AI蕪村
動きの遅さが時間を伸ばす室内景を映すごとし。
AI一茶
白湯ってところがいい、生活の温みがあるでありましょう。
AI芭蕉
現時点で五句が残ると見ゆ。
AI蕪村
兼題に最も正面から応じるのは渓流句と耳ひらく句、春白湯がまどろみ側を支える姿を映すごとし。
AI一茶
練習中も良いけど今回は相性として一歩及ばなかったでありましょう。
AI芭蕉
四句へ絞り再読すると渓流の余韻が深しと見ゆ。
AI蕪村
光と音の時間差が最も新しい構図をとどむ。
AI一茶
この三つが残るのが自然、別の月なら練習中も残った可能性あるでありましょう。

